「トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口」

行動経済学という言葉をよく耳にするようになりました。人間の非合理的な行動を経済学的に分析するこの学問は、ビジネスの世界でも大きな注目を集めています。しかし、その注目度に反して、実際のビジネスプランニングに活用されることは多くありません。なぜでしょうか?

私がビジネスパーソンの方々から聞いた主な理由は次の3つです:

  1. 言葉が難しい
  2. 体系化されていない
  3. 検討フレームワークになっていない

つまり、行動経済学の重要性は理解していても、それを具体的にどう活用すればいいのかわからない。そんな悩みを抱えている方が多いのです。

本書は、こうした課題を解決し、行動経済学をマーケティング領域で実践的に活用するためのエッセンスをまとめたものです。

本書の特徴は、行動経済学の理論を「26の切り口」として整理し、それをビジネスの現場で使える具体的な施策にまで落とし込んでいることです。これらの切り口は、目的別に5つのカテゴリーに分類されています:

  1. 効率よく「好感認知」をつくるための5つの切り口
  2. 新たなニーズを創るための7つの切り口
  3. 魅力的なものに見せるための5つの切り口
  4. 購入ストレスを低減するための4つの切り口
  5. 自然に継続させるための5つの切り口

例えば、「効率よく好感認知をつくる」というカテゴリーには、「ユーザーを広告塔に」「それとわかるデザイン」「強力パートナーに乗る」といった切り口が含まれています。これらは、ただの理論ではなく、すぐにビジネスに応用できる実践的なアイデアの源となるものです。

さらに本書では、これらの切り口を使って具体的なマーケティングアイデアを創出する方法も紹介しています。アナロジカル・シンキング(類推思考)を用いて、次の5つのステップでアイデアを導き出していきます:

  1. 前提条件の整理
  2. 「顧客価値」の掘り起こし
  3. 「阻害要因」の探索
  4. 「26の切り口」を使ったアイデア導出
  5. アイデアの絞り込みと精緻化

この方法を使えば、行動経済学の知見を自社のビジネスに効果的に適用できるはずです。

なぜ今、こうした方法が必要なのでしょうか?

それは、私たちが成熟社会に生きているからです。もはや、単純な論理や理屈だけでは人々の心を動かすことはできません。生活者の感情的、非論理的な判断や選択のメカニズムを理解し、それを逆手に取った戦略が必要なのです。

本書で紹介する「心のスキ」を突く手法は、まさにこんな時代における事業戦略やマーケティング戦略を考える上での一つの突破口になり得るはずです。

本書は、行動経済学の基礎から実践的な活用方法まで、段階的に学べるよう構成されています。

第1章では、マーケティング戦略と行動経済学の関係性について解説します。なぜ行動経済学が使いにくいのか、どうすればマーケティングに活用できるのかを明らかにします。

第2章では、「26の切り口」を詳しく紹介します。それぞれの切り口について、具体例を交えながら解説していきます。

第3章では、これらの切り口を使って実際にマーケティングアイデアを創出する方法を、ステップバイステップで説明します。

また、本書には6つのコラムも収録されています。「ナッジ」や「クレジットカードに対するホンネ」、「マイナンバーの普及率はなぜ低いか」といった、興味深いトピックを取り上げ、行動経済学の視点から分析しています。これらのコラムを読むことで、行動経済学的な思考がより身近なものになるでしょう。

本書は、マーケティングに携わる方はもちろん、事業戦略を立案する経営者の方、新規事業の企画担当者の方など、幅広いビジネスパーソンにお読みいただきたいと思います。

行動経済学の知見を活用することで、これまで見えていなかった新たなビジネスチャンスが見えてくるかもしれません。あるいは、長年抱えていた課題に対する新たな解決策が浮かぶかもしれません。

本書が、皆さまが新たなマーケティング施策アイデアを創発する際の、一助になれば幸いです。行動経済学を武器に、ビジネスの新たな可能性を一緒に探っていきましょう!
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