「人的資本経営」という言葉が、かなり浸透してきました。確かに、従業員を単なるコストではなく「資本」として捉えるこの考え方は素晴らしい。でも、ちょっと待ってください。本当にその本質を理解して導入していますか?
人的資本経営と指標開示の流れ、その落とし穴
人的資本経営、そして指標の開示という流れ。各社がその本質的な意味合いを解釈し、実効性のある取り組みに繋げなければ、結局、キーワードだけが上滑りし、「世の中ごとなので、なんとなくやっている」という状態となり、成果が出ぬままいつしか消える・・という、パターンに陥る可能性もあると言えるでしょう。
過去にも似たようなことがありましたよね。「ダイバーシティ経営」や「働き方改革」など、耳触りの良いフレーズは次々と生まれては消えていきました。人的資本経営も同じ轍を踏まないよう、しっかりと腰を据えて取り組む必要があります。
指標開示の真の目的とは?
そもそも、指標の開示は、何のために、誰のためにやるのか? 株価に少しでもいい影響を与えるために、ESG投資の対象銘柄になればOKなのか、政府からの覚えがめでたければOKなのか?
勿論、それらが主たる目的かと言えば、副次的なものでしかありません。その意味合いを捉え、正しく「目的」を設定しないと、前述のパターンに陥り、間違いなく上滑りします。
指標開示を戦略的に活用する
指標の開示を、単なる義務として捉えるのではなく、自社にとってメリットを生み出すためのツールとして活用するならば、あるべき位置付けとはただ一つ。それは、各ステークホルダーに対して、自社を選んでもらうための「先行指標」として機能させるということです。
考えてみてください。企業を前に動かし、将来に繋げる原動力は、間違いなく「人」です。「投資家」の視点でも、「求職者」の視点でも、その企業に優秀な人材が続々と入り、しっかりと定着が図られ、然るべき育成が施され、新しい価値がボトムアップ的に生み出されているという状況が、何らかのかたちで顕在化されていれば、その企業の将来性を感じることができるはずです。
HR-KPIを戦略的に設計し、活用する
ついては、「人」「人への向き合い方」に関する指標、つまりHR-KPIを、自社を選んでもらうための「先行指標」として位置付けようとした際に、どのような視点が必要となるでしょうか?
- 長期的視点の重視: 四半期ごとの数字に一喜一憂せず、3年、5年先を見据えた指標設計を。
- 質的側面の可視化: 単なる数字の羅列ではなく、社員の成長ストーリーや、イノベーションの芽を感じさせる定性情報も。
- 業界特性の考慮: 他社の真似ではなく、自社・自業界の特性を踏まえた独自の指標を。
- 透明性の確保: 良い面も悪い面も、包み隠さず開示する勇気を。
- 改善プロセスの明示: 課題があるのは当たり前。それをどう改善していくのかのプロセスこそが重要。
こうした視点を持ちつつ、自社の人的資本に関する取り組みを戦略的に開示することで、真の意味での「人的資本経営」が実現できるのではないでしょうか。
最後に
人的資本経営は、決して一時的なブームで終わらせてはいけません。しかし、その本質を理解せずに取り組めば、単なる「バズワード」で終わってしまう危険性があります。
経営者の皆様、ぜひこの機会に、自社の人的資本経営のあり方を今一度見直してみてはいかがでしょうか。形だけの取り組みではなく、真に企業価値を高める戦略として活用できているか、自問自答してみてください。
人的資本経営の導入や、効果的なHR-KPIの設定について、より具体的なアドバイスが必要な方は、ぜひお問い合わせください。皆様の企業の持続的成長のお手伝いをさせていただきます。
株式会社grament